HOME INFORMATION月1連載「Road to Opal」

Road to Opal 20

前号ではついに終日オパール採掘に挑戦するも午前の部は「玉砕」と言ってよいほど結果が出ず、意気消沈のまま昼休憩に入るべくトラックの荷台にて揺られながら露営キャンプ地に戻った洋灯舎。お昼に用意してもらったチキンサンドイッチを頬張りながら午前中の作業内容を振り返りながら午後の部の作戦立て直しをはかることに。朝に作業していた採掘エリアを少し移動させ、以前にもオパールが発見されたとする箇所にショベルカーを移動させ、新たな鉱脈を探ることにしたのである。1日、2日の作業で結果が伴わないからといって一喜一憂すべきではないことを頭では理解しているものの、やはり限られた時間しか滞在できない身としては、どうにかして一発探り当てたいのだ。何が何でも!是が非でも!!
気合いを入れ直して午後の部に再チャレンジ。


昼も過ぎれば気温もグングンと上昇し始め、気が付けば30度以上に。真夏に比べればまだまだ涼しいとは言え、ただでさえ重労働と呼べる作業を一段と過酷にしてくれるには十分すぎる気温だ。
自他ともに認める汗っかきの洋灯舎としては午後の部開始30分ですでに汗じょぶじょぶ状態だ。したたるどころではない。熱と汗とホコリと群がるハエと格闘しながら、採掘後の残土のがれ場をひたすら駆けずりまわりながら、オパールを内包してそうな、それらしい原石を拾ってはのちに回収するために一か所に集積してゆく。しかし、この原石がこれまた重い。当たり前だ。鉄鉱石なのだから。しかも大きいものになるとバスケットボール大、もしくはそれ以上のものもあるので、それらを担いで足元の悪い斜面を何十回、いや、何百回と登り降りするわけだからその疲労感も想像していただけるのではないだろうか。週に2,3度のジム通い、冬場は八甲田にて非常勤ガイドとして毎日雪山に入る洋灯舎はそれなりには体力がある方と自負しているのだが、いかんせん使う筋力が違うのであろう、慣れない動作にふらつく身体に喝を入れながらエンドレスな作業が続く。そんななか、おっ!?少しオパールらしき兆候が壁面に視えた(ような気がする)!急いでブローワーで土埃を風で飛ばし、ショベルカー作業を中断し、壁面を注意深く観察する。コモンオパールか、だが、兆しではある。さらに観察を続けるとここでは明かすことはできないが、この辺りでオパールが発見される際に比較的有望とされる「ある」特徴的な地層が観てとれるとの事。悪くない、、リーダー格がそう語る。どのような特徴に注目すべきかなど、さらに詳しく地層の読み解き方をレクチャーしてもらい、再度重機が唸りを上げる。
その後しばらく空振りが続き、一時は希望に胸が膨らんだかのように思えたのだが、やがて音もなく萎んでゆくのだ。気がつけば17:00だ。水分が足りてないのか、少し眩暈がする。軽い熱中症のサインか、やわらげるために頭から水を被る。「今日はもうダメか、、」そう覚悟をしはじめた時、それは予告なく訪れた。ショベルカーで崩した、硬い、褐色の鉄鉱石の割れた断面にちらつく深い蒼の輝きが。来た!全員が走り寄り、持っていたハンマーで更に原石を叩き割る。誰の目にもあきらかにいままでの石コロとは異彩を放つ輝きが顔を覗かせている。まだ小さい破片だが、まごうことなき美しいブルーの輝きだ。オパールだ。
あたりをさらに見回すと、次々とブルーをちらつかせている原石の欠片が転がっている。間違いない、鉱脈はこの先にある!だが時間もない。そして洋灯舎は明日には移動しないといけないので、残された作業時間はあと僅かだ。


ラストチャンス、この日最後のショベルカーのツメが壁面を引っ掻くようにして岩壁を削り取る。キ、キキッと鉄鉱石にあたった時の特有の音がしたその刹那だ。「ガキンッ!」と何かが割れた音がしたと同時にそれは姿を現した。
名刺サイズ位はあろうかと思われる、濃く、深い、まるで海を連想させるかのような美しいペアのブルーが。片方は地面に転がり、もう片方だけは岩壁に埋まった状態の美しいボルダーオパールが世に出た瞬間だ。


ただただ興奮する洋灯舎の、頭蓋骨を突き抜け直接的に脳に響きわたる声が聴こえる、、
「こりゃぁ、やめられん」。

次号 現代編「結果オーライ」

   
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