月1連載「Road to Opal」

Road to Opal 19

時は現代、2023年4月某日、前号より引き続き号外編だ。

疲れもあってか、寝慣れないcabinのベッドではあったが、よく眠れた方だと思う。昨年夏に続き2度目と言うのもあったのだろう。
クイーンズランド州の地図にも載っていないような広野に設置された実に快適な露営地だ。
朝7:00。天気は上々。風は少し感じるも、湿度はなく、いたって快適な朝だ。
予報では35℃位まで気温が上がるとの事だったが、今のところ涼やかで、素晴らしい採掘日和の予感。たかぶる気持ちを落ち着かせ、まずは母屋に向かい、世話になっている鉱夫たちと合流。中身は良くわからなかったが、なにやらめちゃめちゃ美味しいスムージーを朝食がわりにご馳走になり、コーヒータイムだったり、朝のメールチェックなりを済ませる。サラッとかいたが、そう、ここではがっつりとWifiが繋がるのだ。こんな荒野の、何もないどまんなかで、ちょっと前なら考えられなかった事だ。世話になっている露営地(キャンプ地)の母屋にしてもガス(プロパン)、電気(ソーラー&ディーゼル)、水道(雨水貯水)、シャワーまであり、冷蔵庫、冷凍庫やら生活に必要なものはなにからなにまで揃っている。もはや立派な「家」だ。さらにいえば自家菜園で新鮮な野菜まで採れるのだから改めてオパール採掘にかける彼等のなみなみならぬ意気込みと、それを遙かに上回る覚悟を感じる。そんな大切な場所に招き入れてくれ、さらにはガチな採掘まで一緒に手伝わせてくれるのだから、なんと言っていいのか。。ただただ頭が下がる想い。
荒野を眺めながらのコーヒータイムも終わり、いよいよ採掘現場に向かうことに。この時点で午前8:45分。前回、夏に採掘に挑戦したときの反省を活かし、今回は足首までしっかりと固定されるタイプのトレッキングシューズを持参。がれ場をひたすら歩き回り、時には走り回るのでスニーカーだとふにゃふにゃで下手をすると足をくじいてしまいそうなのだ。
足元をしっかりかため、作業着に着替え、今回から持参のゴム作業手袋をはめ、充分な水を携え、トラックの荷台に飛び乗る。
荒れた、でこぼこ道に身体を揺すられながら、期待と興奮で高揚する気持ちを抑えながら、やがて現場に着く。空のバケツを手に、採掘エリアに降り立つ。洋灯舎を含め3人体制だ。
この現場はショベルカーを使って掘り進める、いわゆる「露天掘り」と呼ばれるスタイルだ。対して、地面に井戸穴のような穴を掘って、地中10m〜20mのオパール層近辺をアリの巣のように採掘する「井戸堀り」と呼ばれる手法もある。ショベルカーのように大型の重機を使わないで良い分、かなり安上がりにはなるが、落盤事故など怪我や命を失うリスクがより高いとも言える。その点、「露天掘り」は怪我などのリスクが抑えられる分、重機にかかる初期コスト、それらを稼働させる大量の燃料費、修理費など高い維持コストがかかってしまうわけだ。
今回の3人チームのうちわけは、いたってシンプル。
1人がショベルカーを操縦し、原石が埋もれていると思われる付近の地層をショベルの歯をうまく使いながら、表面を削り出し、その削られた後を残りの2人がオパールの痕跡の有無を目視で確認してゆき、怪しいと思われる箇所をひたすらハンマーで叩き割ってゆく。また、それらしき原石が出れば、バケツの中に放り投げ、傍らにキープ。後日、これまたハンマーで叩き割ったり、切ったりする。この手順の繰り返しだ。単純な作業の繰り返し、、だが、これがキツイ!
ショベルカーのすぐ脇に待機し、削られる度に即座に足場の悪いがれ場の斜面を駆け降り、ハンマー片手に親の仇ごとく、硬い鉄鉱石が埋もれた壁面を渾身の力で叩いてゆくのだ。開始1時間もすれば、腕はかなりパンパンになり、汗と埃まみれになる。そして当たり前と言えば当たり前だが、オパールはそう簡単に姿を現してはくれない。そう。全くと言ってよいほど。。
開始2時間、ひたすら壁面を削り取る作業が続くが、削り取られるのは体力と気力ばかりだ。
「ほんとにあるのか?」そんな不穏な考えが頭の中をよぎる。開始2時間半、細かい欠片のようなものはいくつかみつかり、その都度期待で胸を膨らませるもののことごとく撃沈。
「アカンやつだ、これ!!」と心の中で叫び始めたタイミングで、、作業を中断。気がつけば昼ご飯の時間だ。再びトラックの荷台に乗りながら、露営キャンプにもどる。来る時とはまるで真逆な気持ちを抱きながら。。

次号 現代編「ついにジャックポットか!?」

   
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