「アメリカンアンティークランプ」

アメリカは歴史の浅い国です。古ければ古いほど尊ばれる骨董の世界では新参者としてやや肩身の狭い思いをするすることがあるのはやむを得ません。それにはアンティークの定義として百年程度をめどとすると言った財務省だか税関だかの役人が事務処理上便宜的に口にした言葉を拾い上げた、“専門家”のことばが流布されていつの間にか日本でもガイドブックなどには百年たてばアンティーク、五、六十年はコレクティブルなどと日本でしか通用しない珍妙な定義が行き渡るようになっていることも一役買っているようです。

そんなことは忘れましょう。

古いものはその希少性から自動的に偉くなるのは自然の成り行きです。そんなに古くなくても堂々とアンティークを名乗れるものが沢山あります。その代表例がアメリカンアンティークランプと言えるでしょう。

アメリカは薪まきや石油を燃やした炎の明かりに頼らずに、真空状態にまで空気を抜いたガラス球に、木綿や竹由来の電気抵抗の高いカーボンのフィラメントを封入した電球に通電し、発熱させて明かりをとるエジソンによる電灯の発明(1879)とそれにひきつづきフィラメントをタングステンに置き換え更にフィラメントの高温による蒸散をおさえための窒素ガスの封入等電球の性能と寿命の飛躍的な向上などをともないつつほぼ今日の水準となるのはやっと1910年ごろでありこれらの一連進歩がほとんどアメリカ国内で起こっていたという事は特筆に値するでしょう。

まさにアメリカは電灯ランプについては世界最古の歴史を持つ国であり、また開拓時代の原始的なかがり火、たいまつ灯りから、ローソク、鯨油、石油ランプなどを経て、電灯に至るまでの、人類の灯りの全歴史を400年ほどの間に一気に駆け抜けた、最先端を行く国でもあります。

電灯というものが人類の明かりの歴史に革命をもたらしたのは事実ですが同時に、明かりの楽しみ方にも革命をもたらしました。それは照明器具の多様な発展、とりわけ電球の発明はランプデザインの一新をもたらしました。
それ以前の明かりとは、燃料が何であれ明かりは炎から取り出すものであって、炎をさかさまにしたり横へ向けたりすることは不可能でした。

つまり炎の真上にはランプシェードを取り付けられないという絶対的な制約のもとにあったのです。今やその軛くびきから解き放たれました。ランプの光源(電球)の上から、これまで避けられていた紙や布、ガラスなど、様々な材質や意匠のランプシェードを、被せることが出来るようになったのです。

こうして電球の生んだ照明器具のデザイン上の革命的な可能性の拡大は、とりわけガラス工芸にインパクトを与え、19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパで起こったアールヌ­-ボーの運動への強力な援護となるものであったに違いありません。私にはむしろガラス工芸におけるアールヌーボー興隆のきっかけを作ったのは、電球であるとさえ思えてならないのです。

とにかくこのようにして白熱電灯という夜の闇を部分的にせよ明るいものに変える手段を手に入れた人間の生活は、「眠らない街ニューヨーク」という言葉が生まれるように、活動時間がより長いものへと変容していきます。獣脂ランプを用いていたころは起きているとお金がかかるので夜は寝るものと決まっていました。

ところが、スイッチ操作一つで魔法のように一瞬のうちに部屋の隅々まで明るくしたり、元の暗闇に戻したりという明暗をコントロール出来るこの安価で安全、安定して供給される、電灯という文明の利器が人類の夜を長いものにしてきました。この高々百年余りの間の大変化は、果たしてこれを大変化とみるべきかどうかをも含めてこれが人類史上に持つ意味について考察したいと思っておりますが、考察を加えるゆとりも力も今はありません。ここでは主としてアメリカでのガラス工芸の進歩がもたらしたランプシェードのすばらしさと、それを用いたシャンデリア、卓上ランプ、フロアランプの数々をご紹介したいと思います。アメリカは移民で出来た国ですから、ガラス工芸についてもそのルーツはヨーロッパにあるのはもちろんです。

また、欧州での芸術運動や流行の影響を受け続けているのも事実です。炎のランプの長い歴史のもとで電灯の発明から実用化さらには照明の革新である蛍光ランプ、そして今日のLEDへと開発の芯は主としてとしてヨーロッパというよりはアメリカでした。こうしてアメリカはガラス工芸の先進諸国に学びつつ独自に技術と新たな美意識を開発し、ティファニーの様にアメリカンヌーボーとして本場ヨーロッパを凌ぐレベルにある工房も出てきました。その中でアメリカ東部ニューイングランド地方には、このような灯りの歴史の足跡をたどることのできる、様々なデザインのランプが残されています。

洋灯舎では、ニューハンプシャー、バーモント、マサチューセッツ、コネチカット州などのニューイングランド各地を駆けめぐり、素朴で簡素な味わいをたたえた実用性の高いものから、洗練された装飾美を持つものまで、表情豊かなランプを多数取り揃えました。

たった一つのランプがどれほどお部屋の雰囲気を変え、自分の世界をも広げてくれるでしょうか。

自分の世界に浸るために、大切な方へのプレゼントに。
あなただけのランプを見つけてみてください。

「アメリカンアンティークランプ」

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